君のシャンプー
「ねぇ、いい加減自分のシャンプー置いておきなよ」
何度目かの台詞を呆れながら君は吐く。
「そのうちね」
君はわたしのこだわりの強さをよくよく知っている。君の洗面台にはわたしの基礎化粧品がずらり。ヘアオイルもボディクリームも、なんとバストクリームだって置いてある。お風呂場にはわたしの石鹸とバスリリー。でもシャンプーだけは置いていない。
平日、わたしは仕事から自分の家に帰り、お風呂に入ったあと入念に髪を乾かす。香るのはわたしのではなく、君のシャンプーの香り。君のシャンプーは、わたしのシャンプーより少しだけ香りが強い。髪を洗ったあとだけは、わたしは君の香りに包まれる。
あと2日は、わたしの髪はきっと君と同じ香り。君に会える週末までは保たないけれど。まだ、君の家にわたしのシャンプーは置かない。